暴君による王政を倒して共和政を築いた人々の子孫であるローマ市民は、「王(レクス)」の名を神経質なまでに忌避した。共和政の伝統を乱す、古の王の如き独裁者は、何よりも恐れられてきた。だが一人の「王」が退場すると、その「王」の後継者は、市民の熱狂的な支持で迎えられた。人々は、「王」という名の代わりに、彼に「尊厳者(アウグストゥス)」という名を贈った。
 私が七つの丘のまちで過ごしたのは、神君カエサルが暗殺された後、その後継者アウグストゥスが事実上の王位に即くことが許された、不思議な時代の始まりに属していた。 

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 過去の作品です。
 書き直し入れようと思ったのですが、やってしまうとズタズタになりそうです。直すのが下手なもので。そもそも現行シリーズは、前作(「クレオパトラの娘」)を書き直せないから、一から書いたものです。なのであまりいじらない方向で行きます。間違いもあるってわかってるんですけれども。何かやらかしても通用する、完璧な言い訳だなあ。
 今のところ改訂すると決めてる部分は架空だった登場人物を一人、実在の人に直すことと、オチの一部に相当する部分を書きなおすことです。今と当時では価値観が変わった部分があって、ありきたりにはなるけれど、私の作品として納得できるようにするつもりです。
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